J.S.バッハと聞くと何を思い浮かべますか?
クラシックに詳しい人だとすぐにピンッとくるかも知れませんが、そうでない人は、夜中に音楽室で見つめてくるやつ・・・なんて感じでしょうか??
実はドイツ語で「Bach」は「小川」という意味です。
小川さんって言うと、なんとなく親近感がわきませんか??
ただこの小川さん、ただの小川さんではありません。間違いなく、人類史上最もとんでもない人の一人です。
今回はこのJ.S.Bachについて記事にしてみます!
(Bachの語源を遡ると、「小川」とは違い、「おひねり」という意味があるそうです。吟遊詩人などに与えられるギャラって意味なんですね。これはBachの家系について考えると有力な説に思えます。)
Contents
バッハってどんな人?
ずばり子だくさんな人です!
最初の奥さんと次の奥さんとの間に、合計20人も子供をつくっています!
ふつうあり得ますか!?20人ですぞ!野球チームがつくれるどころじゃないっつーの。
しかもその中で有名な音楽家になった人がたくさん。芸術家の家系なんですね。
(実際、バッハの家系にはたくさんの音楽家や画家がいます。)
またバッハの作品は膨大な数があります。
なんとその数、約1087作品!!
しかも作品一つ一つが、色々な曲を合わせた作品なので、(マタイ受難曲BWV244なんて68個の曲が合わさってます!)曲数で言うとすごい数になるでしょう。
なんというか子供といい、作品といい、本当に精力的な人だったんですね。
またこんなエピソードも残っています。
ある時、バッハは勤め先に一か月お休みをもらって、数百キロ先の町までブクステフーデという偉い作曲家に会いに行きます。
そんで帰ってきたのは、なんと四か月後!!
いくらなんでもさぼり過ぎです・・・。
怒った勤め先の人が、バッハに理由を問い詰めると・・・「かの地でいくつかのことを把握しようとした」ですと。
・・・もう、なんというか、あれです。言葉にできません、この人。
とにかく、ものすごいエネルギーに溢れた人だったんではないでしょうか。
バッハってなにがすごいの?
1.作品の美しさが普遍的である
音楽の父とまで言われるその作風は、バッハ以前の西洋音楽を完成させ、バッハ以後の音楽に決定的な影響をもたらしたと言えます。
どれくらい影響が大きいというと、クラシック音楽の世界はもちろん、300年後の現代で世界中のロックミュージシャンやジャズプレイヤー、ポップスシンガーまでバッハを引用するほどです。
ちなみに音楽を直接引用してはないですが、こんなのもあります。
どんな芸術の世界でも、300年経ってここまで影響力を持つ芸術家が他にいるでしょうか?
バッハの作品は普遍的な美しさがあります。
2.みんなが褒めてる
バカみたいな表題になってしまいましたが、ちょっと褒めてる人物の顔ぶれと褒め言葉の内容がすごいです。
”《平均律クラヴィーア曲集》をあなたの日々の糧にしなさい。あなたが最高の音楽になれることは確かです。”
— ローベルト・シューマン
”音楽家たちが、自らの仕事にかかる前に、凡庸に陥らないために、まず祈らなければならないこの慈愛にあふれる神”
— クロード・ドビュッシー
”バッハの奇蹟は、ほかのどんな芸術にも現れなかったものだ……わたしは、バッハがドイツの巨匠である事実を否定はしない。しかし国家というレッテルを貼ってバッハを限定しようとするのは間違っている。バッハはあらゆる国家、あらゆる時代を超越した、光輝く天才に属している。”
— パブロ・カザルス
”私はそこで初めて、全き心の平安のうちに、外的な何ものにも煩わされず、あなたがたの偉大な大家〔バッハ〕の何たるかを知るようになったからです。私はそれを次のように言い表しました。永遠の調和がそれ自身と談笑しているかのように、言うなれば天地創造の直前に神の胸の内で起こっていたであろうように、そのように私の内奥においてもまた何ものかが揺れ動き、まるで私が耳も、目さえも、さらにその他の何の感覚も持っていないか、または必要としていないかのようにさえ思えたのでした。”
— ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
”彼は確立した規律の枠の中で、いかにして独創性を発見するかを教えた。実際には、いかにして生きるかを。”
— ジャン・ポール・サルトル
如何でしょうか?
これだけ言ってもらえたら天国のバッハも嬉しいでしょうね!
実際、それだけ素晴らしい作品を生み出したのです。
3.どの楽器で演奏しても魅力がある
バッハの時代は今から300年前ですから、当時存在しなかった楽器でバッハを演奏することが多々あります。
しかし、魅力があるんです!
これが他の作曲家だとそうはいきません。
先に紹介したバッハの普遍性につながる部分がありますね。
1分35秒あたりからバッハの演奏です。
こんな楽器はもちろん当時存在しません。ちょっと極端な例かもしれませんが、色んな楽器で弾いて魅力があるのがバッハです!
4.飽きない
バッハは飽きません。
良さがわかるまで少し時間がかかるかも知れませんが、ひとたびわかれば一生楽しむことができます。
未だにわたしのまわりでも、まわりでなくとも「バッハはもう飽きたよ」なんて言ってる人見たことありません。
他の偉大な作曲家でも、聴き続けると少し聞き飽きた気がしてしまうこともありますが、バッハにはそれがありません。
少し主観的な意見になってしまいましたが、これもバッハのすごさの一つだと思います。
バッハの聴き方
音楽の聴き方はもちろん自由です。
しかしバッハ音楽の特徴、スタイルというものがあり、それが理解できるとより楽しく聴くことができます!
1.ポリフォニー
バッハの音楽はポリフォニー(複数のメロディーが同時進行する音楽)です。
同時代の人たちは早々に、メロディーと伴奏のわかりやすい音楽に移っていったのですが、バッハは最後までポリフォニー音楽を貫きました。
ヴァイオリンなどのいわゆる「メロディー楽器」のための曲ですら、がっつりポリフォニーです。
曲によって、一見メロディーしかないように聴こえても、ほとんどはポリフォニーの構造になっています。
ですから、聴く人も二つ、三つのメロディーを同時に認識できるとすごく楽しく聴けるようになります!
2.一拍目に向かう
バッハの音楽は、一拍目に向かう特徴があります。
二曲目のこのピアノ曲だと、ほとんど細かい音符全てが1拍目と3拍目に向かうようになっています。
「ドミレミドミレミ」のまとまりではなく「ド! ミレミドミレミド!」のまとまりです。
他の曲も試しに聞いてみましょう。どんな巨匠の演奏も、必ず主拍に向かう音は間延びしていない筈です!
3.記号遊び
非常に有名な話ですが、バッハは音符に数字やアルファベットを当てはめたりして、音に象徴的な意味合いを持たせました。
例えばBACHはドイツ語で音階になおすと「シ♭ラドシ」になりますが、このモチーフを使った曲をかいています。
また自分を表す数字である14を音符になおし、たくさんの作品に散りばめていますし、3や4という数字にも特別な意味を持たせています。
つまり、感情的な、美しい旋律へのこだわりというより、非常に理知的な基準で作曲した人なのです。
背景がわかると、ワンフレーズにありったけの感情をこめて歌ったり弾いたりしなくてもよい(現代の曲ではしばしば好まれる歌いまわしです。)、バッハのスタイルがわかってきます。
4.構造の美しさ
語り始めるとキリがないのですが、動画の1:26までよく聴いておくと、その後の流れはそれまで出てきた材料の転用であることがわかる筈です。(フレーズを分解したり、反転させたり、引き伸ばしたり、色々やっています!)
細かいことは全部抜きにしても、1:06と2:05と3:10に出てくるシークエンス(和音の連続)が毎回、違った表情で現れるのには気付かれるでしょう。
つまり、バッハを深く楽しむには曲中で前に何が起きたかを覚えておく必要があります。
構造が把握できれば、バッハを聴くのが楽しくて仕方がなくなります!
5.キリスト教信仰
バッハはキリスト教の信仰者でした。彼の音楽は聖書と密接に結びついています。
キリスト教では、イエスに導かれて人生を歩む人を「牧場で草を食む羊」と象徴的に表します。
次の曲はまさに羊である心境を歌った曲です。
いかがでしょうか?まるでバッハの心が伝わってくるかのような音楽です。
キリスト教について理解するとますますバッハを楽しめるでしょう。
普遍的な価値
わたしは個人的に、バッハは自分の偉大さをよくわかってなかったのではと思います。バッハの人物像は、後の時代で神聖化されてしまいましたが、実際はタバコとワインを愛し、少し怒りっぽいところもある極めて人間的なものです。
しかし、彼の作品には普遍的な何かが確かに存在しますし、つまり、バッハの音楽がバッハ自身を完全に超えているようにわたしは感じます。
普遍的なものの魅力って抗いがたいものがありませんか??
わたしは自分の生涯ですこしでもその秘密を覗けたらなぁなんていつも思ってます。