【全ての音楽家のために】「脱力」できない本当の理由は?脳の習慣を書き換えるフィジカルトレーニング!

今回の記事では、すべての音楽家にとっての永遠のテーマである「脱力」についてお伝えします!

「もっと力を抜いて!」 そう言われたこと、あるいはそう人に教えたことはありませんか?
脱力が大事だとはわかっていても、実際にどうすればいいのか、言葉ではっきり説明できる人は少ないかもしれません。

この記事を最後まで読んで、わたしのお伝えする「音楽家のためのフィジカルトレーニング」をやってもらえれば、「脱力とは何か」が理論的にわかるだけでなく、実際に余計な力が抜けた状態で楽器が弾けるようになります。

この記事はカラダ♮のYouTubeで発信している動画の内容を記事に直したものです。
映像を見た方がわかりやすい所も多々ありますので、ぜひ動画も参考にご覧ください!

「脱力=完全に力が抜けてしまう」ではない

まず、土台となる知識を固めましょう。 多くの人が誤解していますが、「脱力しなさい」というのは「全身の力を完全に抜きなさい」という意味ではありません。

人間の動きはすべて、脳からの指令で筋肉が縮んだり緩んだりすることで起きています。私たちがただ座っている時でさえ、姿勢を保つために筋肉は働いています。 もし完全に脱力してしまったら、私たちは座ることも立つこともできず、顎は落ち、その場に崩れ落ちてしまうでしょう。

つまり、楽器を演奏するためには、必ず「必要な筋肉」は緊張(収縮)させなければなりません。

そういうわけで、より正確な脱力の定義とは、以下の通りです。

「必要なところ」には力を入れ、「不必要なところ」から力を抜くこと。

なぜ頭でわかっていても「力む」のか?

「必要なところに入れて、不要なところは抜く」。
言葉にすれば簡単ですが、これがすぐにできないのはなぜでしょうか?

それは、人間に「習慣(パターン化)」という機能が備わっているからです。

私たちは成長の過程で、体の動かし方を学習し、パターン化させてきました。
例えば、大人になってから外国語を習うと、どうしても母国語のアクセントが残ってしまいますよね?
これは、口や舌の動かし方がすでに「日本語用」にパターン化されており、無意識にそれを使ってしまうからです。

楽器演奏でも同じことが起きています。
日常生活で培った「筋肉の緊張パターン」を、楽器を弾く時にも無意識に使ってしまっているのです。

  • 指だけに力を入れたいのに、つられて手首に力が入る
  • 腕を動かすと、肩も一緒に上がってしまう

このように、「連動して力が入ってしまう脳の習慣」こそが、脱力を妨げている正体です。

脱力のための「フィジカルトレーニング」

では、どうすればこの習慣を崩せるのでしょうか?
答えは、「別々に動かすことができる」と脳に再教育することです。
これを専門用語で「分化(ぶんか)」と言います。

論より証拠です。
実際に床にねころがって行うフィジカルトレーニングで、あなたの脳の回路を書き換えてみましょう。


Start:今の状態をチェック

まずはビフォーアフターを比較するために、片腕ずつ天井に伸ばしてみたり、楽器を普段通り弾いてみたりして、現在の「動きの感覚」を覚えておいてください。
確認できたら、仰向けになって床に寝転がります。

STEP 1:手首と指の動き(ぶら下がり&指回し)

  1. 基本姿勢: 右肘を床につけたまま直角(90度)に曲げ、前腕(肘から先)を天井に向けます。指は自然に曲がっていてOKです。
  2. 手首の脱力: ゆっくりと手首の力を抜き、お化けの手のようにダラリと垂れ下がらせます。また真っ直ぐに戻します。これを数回繰り返して「手首から力が抜けている感覚」を掴みます。
  3. 指の独立: 手をダラリと垂れ下がらせたまま、指を一本ずつ円を描くように回してみましょう。
    • ある指を動かした時に、他の指がつられて動かないように意識します。
    • 手首は垂れ下がったままにしておきましょう。

STEP 2:前腕の回転(回内・回外)

  1. 手をダラリと垂れ下がらせたまま、前腕を回します。
    • 手のひらが顔の方を向いたり、足の方を向いたりする動きです。
    • 肩や胸の力も抜いて、できるだけ大きく回します。
  2. 端での屈伸: *手が十分に外側に回ったらそこで止め、垂れ下がった手を伸ばしたり(起こしたり)、また垂れ下げたりします。
    • 内側に回した状態でも同じように、手を起こしたり垂れ下げたりしてみましょう。

STEP 3:腕を伸ばして振り子の動き

  1. 回転させながら伸ばす: 一度休んでから、基本姿勢(肘90度)に戻ります。
    • 手を垂れ下げ、手のひらが顔の方を向くように前腕を回します。
    • その回旋運動を保ったまま、肘を持ち上げて腕全体を天井に向かってゆっくり伸ばしていきます。
  2. 縦の振り子:
    • 腕が伸びきったら、手首はダラリとさせたまま、腕全体を頭方向・足方向へ「振り子」のようにゆらゆら動かします。
    • 次に、手を外側に回した状態でも同じように揺らします。
    • 最後に、自然な向きに戻して揺らします。肘はピンと張らず、少し緩めておきましょう。
  3. 肩の上げ下ろし: 揺らすのを止め、腕を天井に伸ばしたまま、肩(肩甲骨)を床から少し浮かせたり、ストンと落としたりします。リズミカルに行いましょう。
  4. 横の振り子:
    • 肩を下ろして落ち着かせたら、今度は腕を左右(内側・外側)にゆらゆらと振り子のように動かします。

STEP 4:指で輪っかをつくる動き

  1. 一度腕を下ろして休み、また基本姿勢(肘90度)を作ります。
  2. 今度は手首を垂れ下げず、親指と小指を近づけて指先同士をくっつけます(輪っかを作る)。
  3. 接触したまま手首を動かす: 指先が触れ合っている状態をキープしたまま、手首を垂れ下げたり戻したりします。
  4. 残りの指の運動: 手を垂れ下げた状態で、残りの3本(人差し指・中指・薬指)を曲げたり伸ばしたりしてみましょう。
    • 親指と小指はくっついたままです。
    • 手を真っ直ぐに戻した状態でも、同じように輪っかを作ったまま、3本の指を動かしてみましょう。

STEP 5:腕回しの動き

  1. 基本姿勢(肘90度)から、手を垂れ下げ、前腕を回転させながら天井へ腕を伸ばしていきます(STEP3と同じ)。
  2. 腕が伸びきったら回転を止め、手は垂れ下がらせたまま、腕全体で大きく円を描くように回します。
    • 肩を中心に、腕がひとりでに動くようなイメージでリラックスして行います。
    • 反対回りも行いましょう。

フィジカルトレーニング後の変化を感じてみよう

ゆっくりと起き上がってみてください。 そして、右腕と左腕を感じ比べてみましょう。

  • 腕を上げた時の軽さが違いませんか?
  • 鏡で見ると、右腕の方が長く、肩が下がっていませんか?
  • 楽器を弾いてみると、右手が驚くほどスムーズに動きませんか?

これが「分化」の効果です。

私たちは普段、何かを掴むときに「指・手首・腕・肩」をセットで固めて使う癖があります。
先ほどのフィジカルトレーニングは、「手首は脱力しているけど、腕は回っている」「指はくっついているけど、手首は動いている」というように、それぞれのパーツを別々に動かす(分化させる)体験を脳にさせました。

そこで、脳が「あ、ここはセットじゃなくて別々に動かせるんだ!」と学習し、不必要な連動(力み)が消え、本来のパフォーマンスが発揮できるようになったのです。

カラダ♮について

カラダ♮では、すべての音楽家が「もっと自由に、もっと楽に」演奏できるように、脳科学に基づいた情報を発信しています。他にもたくさんの役立つ記事がありますので、まずは興味のあるものから読んでみて、脳神経を変化させるための方法を学んでみてください。

もし記事を読んで、「もっと体系的に、実践的に学びたい」「演奏家としての『身体の土台』そのものを作り直したい」と感じたなら、動画講座「ゼロから始める音楽家のためのフィジカルトレーニング」がその答えになります。
今回紹介したトレーニングも有効なものですが、あくまで一つの例に過ぎません。動画講座では「脳神経の学習法則」を一から順序立てて学び、理論から実践方法までを包括的に習得できます。受講後には、「なぜ弾けないのか?」の根本原因が自分で分かるようになり、あなただけの練習法を編み出せるようになるでしょう。

「分化」のメカニズムを利用するならば、脱力は比較的すぐに実現できます。
今回の内容を理解するのが難しいと感じた人は、理屈を理解するのは後回しにして「フィジカルトレーニング」だけでも毎日5分やってみてください。
それだけで、まるで子供の頃の柔軟性を取り戻したかのような、根本的な変化を感じられるはずです。
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