「絶対音感」と聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
世間一般では、一握りの天才しか持ちえない能力のように言われており、一説では10000人に1人の割合だそうです。
まさか大人になってから身につくのでしょうか!?
今回は、そんな「絶対音感」について詳しく見ていきましょう。
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絶対音感ってそもそも何なの?
絶対音感の定義は人によっても差があるようです。
しかし一般的な定義としては「基準音なしに音をドレミで認識する能力」です。
Absolute pitch is a rare auditory phenomenon characterized by the ability of a person to identify or re-create a given musical note without the benefit of a reference tone.
”絶対音感とは、基準音なしに音名を認識したり再生できる稀有な人間の能力”
— 英語版Wikipedia
つまり、最初に何の音をもらわなくても音名を認識できるのは、絶対音感です。(他と比べていない、絶対的な音感)
反対に「この音はドですよ。そこからいくとこの音は何ですか~?」ってヒントをもらってできるのは、相対音感です。(他と比べて認識する、相対的な音感)
この点で誤解が多いのですが、絶対音感とはサイレンの音を言い当てたり、コップが割れた音を言い当てたりできる能力のみを指すのではありません。
それも絶対音感の一つですが、基準音なしに音名を認識できるのは全て絶対音感と言えます。
ですから、ピアノの限定した音しか言い当てられない「とても弱い絶対音感」から、日常の音が全て階名で聞こえてしまうような「とても強い絶対音感」まであるわけです。
大人から始めて絶対音感はつくの?
つきます!!
わたしは30歳を超えてから訓練を始めました。
まだ弱い絶対音感ですが、確かに基準音なしに音名を認識できるようになってきました。
具体的には、ピアノの音であればほとんど階名で聞こえるようになり、ヴァイオリンやギターの楽音、またスーパーなどで流れるBGMの音名がわかるようになってきました。
ですから、私程度の絶対音感であれば、誰でも訓練で習得可能だと思います。
しかし、テーブルを叩く音やガラスが割れる音まで全部階名で聞こえるような絶対音感は、大人から始めると難しいのかも知れません。
ですが、そういう絶対音感は自慢になるかも知れませんが、音楽の現場ではほとんど必要とされません。むしろ邪魔になるのではないでしょうか。
(テーブルを叩く音や石ころがぶつかる音は、本来楽音ではなく、それを階名に無理やり直すとすれば、ある意味非常に乱暴な聴き方をしなければいけません。)
そういうわけで、訓練次第では楽音なら全て階名で聞こえる絶対音感を身につけられるかも知れません。
かく言うわたしも、そのレベルを目指してコツコツ訓練を継続しています。
どれくらい役に立つのか?
非常に役に立ちます。
わたしはまだまだですが、相対音感しか持っていなかった以前と比べて、
1.初見ができるようになりました。
指板や鍵盤を見なくても階名がわかるので、それだけ楽譜から目を離さずに曲を弾くことができます。
参考記事:ピアノの初見ができない3つの理由!!【超苦手な人へ】
2.暗譜が早くなりました。
指の動きや形に頼り切った暗譜だったのが、階名で覚えるようになり、記憶力がとても高まりました。
今では本番で「次どうだったっけ!?」という、急に曲を忘れてしまう恐怖がなくなりました。
3.音楽を立体的に把握できるようになりました。
音感を訓練する際に、多声部の聴音もします。これが私には良かったようで、多声部を同時に認識する能力が高まりました。
結果的に和声感も洗練されてきたように思います。
4.歌が上手くなりました。
今まではどんなメロディーも相対的に音程を感じていて、ひとつ前の音しか基準がなかったのが、絶対的な音程の高さも感じられるようになりました。
それで歌う時に音程が非常に安定した実感があります。
5.アンサンブルが上手くなりました。
楽譜に集中しすぎることが少なくなり、余裕をもって周りの音をきけるようになりました。
以上のように、小さい頃から音感教育だけすっぽかしてきた私にとっては絶大なる効果がありました!
具体的な鍛え方は?
そもそもわたしは自分が絶対音感をつけられるとは全く信じられませんでした。おそらく大人から訓練を始める人は、皆同じように感じるでしょう。
そういう状況で、普段から懇意にしていただいている先生にレッスンをつけて頂いたのは良かったです。
わたし「大人からは無理ですよねぇ?」
先生「なんで?大丈夫だと思いますけど?」
なんて会話が何度もありました。
先生に励まされて、半年ぐらいレッスンを続けていたら、確かに自分の変化が感じられました。
そうして、ようやく自分で率先して訓練する気になれました。
そういうわけで、最初の「本当に音感がつくと信じられるハードル」を越えるまでは信頼できる先生にソルフェージュのレッスンをつけてもらうようお勧め致します。
その上で、わたしは以下の参考書を自宅学習の際使っています。
非常に考えられた構成になっており、順番に問題をこなしていくだけで少しずつ音感がつくようになっています。
わたしの場合、間違った問題は日を開けて復習するようにしました。
またギターとピアノは日々弾いていたので、その時にもできるだけ階名を認識して練習するように心がけました。
そうすると2年ぐらいで、少しずつメロディーの階名を認識できる自分に気が付き始めました。
絶対音感のすすめ
わたしのように極端な方は少ないかもしれませんが、初見がおそい、緊張すると曲を忘れてしまう、アンサンブルが苦手などなどの問題点がある人は音感の訓練が必要かも知れません。絶対音感は大人からは無理!と決めつけず、ぜひ少しずつでも訓練に取り組んでみてください。
曲芸のような能力を身につける必要はないと思いますが、少しでもできるようになれば便利な事この上ないです。