「え!練習って全部意味あるよね?練習は裏切らないって聞いてましたけど!?」っていう人!
・・・危ないです。
「意味ある練習ってあれでしょ。色々意識して練習してるから大丈夫。」っていう人!
・・・そんなあなたも今回の内容は聞いたことがないかもしれません。
ぜひ最後まで読んでいってください!
この記事はカラダ♮のYouTubeで発信している動画の内容を記事に直したものです。
映像を見た方がわかりやすい所も多々ありますので、ぜひ動画も参考にご覧ください!
Contents
練習の質を上げないと、どこかで成長が止まる
初心者の頃は、ごくごく短時間、なんとなく練習するだけでもどんどん上手くなりますよね?
そして上手くなるので楽しくなって、楽しいからもっと練習して、たくさん練習するからもっと上手くなって・・・と良い循環が続いていきます。
しかし、ほとんどの人はこの循環がどこかで途切れてしまい、スランプだったり挫折を味わったりします。
どこで循環が途切れるんでしょう?
上手くなるので楽しくなって、楽しいからもっと練習して、たくさん練習するからもっと上手く・・・ならないんです!
あるレベルまでくると、練習時間を増やしても増やしても上手くならなくなります。
この壁を越えられるかどうかが、練習の質にかかっています。
練習の質を上げるには、自分の音をよく聞いたり、色々な身体感覚を意識したり、専門の楽器ごとに方法論があります。
しかし、今回は全ての音楽家に共通する、練習の質を上げるための2大原則をお伝えします!
練習には二つある
本題に移る前に、そもそも練習とは、大きく二つに分けるとわかりやすいのをご存じでしょうか?
1.曲を仕上げる
次の本番やコンサートの曲を仕上げる練習です。
譜読みから始まり、音楽を解釈して、暗譜するまで繰り返し弾いたり歌ったりして、舞台でも自由に曲を表現できるように練習します。
アマチュア音楽家は、舞台で披露する機会は少ないかもしれませんが、家族や友達に聞かせたり、自分が楽しむために練習するのも、曲を仕上げる練習にあたります。
簡単にいうと、曲を覚えこむ練習ですね。
2.基礎力をつける
二つ目は、基礎力をつける練習です。
この「基礎力」という言葉は一般的な用語ではないですし、わたしは自分の生徒に「演奏家としての土台、エンジン性能」とか表現したりします。
ただそのアイデアについては、音楽家なら誰もが当たり前に知っています。
たとえば有名なピアノ曲「エリーゼのために」は、ピアノ初心者にとっては良い目標となる曲ですが、プロのピアニストであれば初見で弾ける曲です。
ヴァイオリン協奏曲を弾ける人は、「パッヘルベルのカノン」をその場で美しく弾けますが、ヴァイオリン初心者は一年ぐらいかけてもなかなか弾けません。
わたしも生徒が持ってくる曲は、曲にもよりますが、基本的にその場で弾いてあげています。
つまり、初心者、中級者、上級者とレベルが上がっていくにつれて、一曲を仕上げるための労力が減っていき、楽に完成度を上げられるようになるんです。
この力を「基礎力」と表現しています。
音楽家として自由に表現できるレベルを目指したい人は、基礎力をつける練習を取り入れてみてください。
具体的には、特定の基礎練習や練習曲・エチュードの練習、ソルフェージュの訓練、作曲・編曲の勉強、即興演奏の訓練、またこのチャンネル、カラダ♮が紹介しているフィジカルトレーニングなどです!
短期的に効果が上がるのは「曲を仕上げる練習」ですが、長期的に効果が上がるのは断然「基礎力をつける練習」です。
そしてどちらの練習をするにしても、練習の質を上げていくことが大事です。
練習の質を上げるための2つの原則
さて、練習の質を上げるための、意味ある練習のための2大原則は「簡単なことをやる」と「色んな状況でやる」です!
1.簡単なことをやれ!
こう聞くと「練習とは難しいことにチャレンジして、限界を突破するためのもんじゃないか?」と思う人も多いかもしれません。私もそう考えていたんです。
しかし、それは間違った考え方です。どうしてそう言えるんでしょう?
まずはウェーバー・フェヒナーの法則です。
ウェーバー・フェヒナーの法則とは、「人間の感覚の大きさは、受ける刺激の強さの対数に比例する」という脳神経の法則です。
簡単な例を使って説明しましょう。
スーパーで買い物袋にバナナを一本入れたら、その分重さを感じますよね?しかし、その買い物袋にすでにスイカが入っていたらどうでしょうか?バナナ一本では重たくなったことを感じられないかもしれません。一房入っていても重さの変化を感じ取るのは難しいかもしれませんね。
またライブ会場や工事現場などの大音量が鳴り響いている所では、普通にしゃべっても声が聞き取りにくいですよね?
これらの現象は、筋肉を緊張させたり、大音量を聞いたりする時、つまりすでに脳に強い刺激が加わっている時に、感覚が鈍くなるという法則なんです。
実はこの法則、筋肉の緊張や音だけでなく、視覚、味覚、嗅覚、さらには金銭感覚といった色んな感覚全てに当てはまります。
ということは、練習している内容が難しければ難しいほど、脳は興奮状態になって、感覚が鈍くなります。
そうすると、自分が何をしているかをうまく感じ取れなくなって、上達が遅くなってしまうってことです。
多くの指導者が「ゆっくり、力を抜いて、ピアニッシモで練習しなさい」と勧めるのも体験的にこのことを悟っているからなんですね。
そしてもう一つは、習慣と条件反射です。
人間はプレッシャーやストレスがかかると、つまり咄嗟の時には、習慣的な行動や反射的な行動が出ます。
例えば、熱いものを触ったとき、日本人の多くが「あつ!」と言いながら耳たぶを触ります。よく考えれば、これはすごく複雑な条件反射ですね!
これは練習にも同じことが言えて、難しいことにチャレンジしてプレッシャーやストレスがかかるほど、既に知っている身体の動かし方、習慣や反射で対処しようとしてしまいます。
これでは新しいテクニックや身体の使い方を習得することが難しくなり、その内に上達が止まってしまいます。
さあ、簡単なことをやらないといけない理由がわかりましたか?
ちなみに余談ですが、基礎練習の意味も実はここにあります。
基礎とは、その人にとって簡単なことです。簡単なことを通してでしか学べないものがあるんですね。
裏を返せば、ほとんどのことを簡単にできる人にとっては、基礎練習は必要ありません。
実際、わたし調べですが、一流の演奏家で「基礎練習は必要ない」と言ってる人も多いです。
というか、そもそも練習すら必要ない人もいます。ある国際的に第一線で活躍されている演奏家と話をした時、「そんなに忙しくていつ練習されてるんですか?」と聞いたら「そう言えば、この2年ぐらい練習してないわね」と答えられて、顎が外れるかと思いました。
2.色んな状況でやれ!
2つ目の大原則は「色んな状況でやる」です。
ここの理論的背景を話そうとすると、少し難しくなるのでかいつまんでお伝えしますね。
脳はある程度ランダムな情報から学びます。
例えば、子供が歩けるようになるプロセスや、喋れるようになるプロセスを思い浮かべてみましょう。
立って歩けるようになるために、腹筋を50回、腕立てを50回などとシステマチックに訓練する子供はいません。
同じように、喋れるようになるために「こんにちは」の発音を毎日10回ずつ練習する子供もいません。
どちらの例も、ある程度ランダムで総合的な情報から、脳が自然にスキルを習得していくのです。
そんなふうに、音楽家も練習の質を上げようと思うなら、ランダムな情報を脳に与えなければいけません。
脳に対するランダムな情報というのは、練習の状況や条件を変えることで得られます。
例えば、いつもとは違う座り方で弾いたり、歩きながら弾いたり、お辞儀をしながら歌ったり、また練習場所を変えたり、人前で弾いたりするアイデアがあります。
有名なバイオリニストのヒラリー・ハーンは、フラフープを回しながらバイオリンを演奏する動画を公開していますね。
さまざまな楽器で伝統的に教えられている練習法、たとえば全てをスタッカートやレガートで弾いたり、付点のリズムで弾いたり、薬指などの弱い指だけ2回連続で弾いたり、歌詞を全て母音に変えて歌ったりなどなどの練習もこれに当たります。
同じことを条件を変えて練習することで、脳により効率的に学んでもらおうとしているのです。
ここのアイデアは、ほぼ無限に考えられます。
「練習しなさい。ただし、○○でね。」
この○○に当たるものを工夫すればいいわけです。
意味のある練習と意味のない練習
つまり「あなたにとって簡単なことを、色んな状況や条件でやる!」これこそが真に意味のある、最強の練習法と言えます!
逆に意味のない練習は、これの反対です。
すなわち「あなたにとって難しいことを、同じ状況でひたすら繰り返す」ことです。
この練習をやりすぎてしまうと、逆に身体がこわばってきて上達しないばかりか、身体を壊してしまうこともあります。
練習してもぜんぜん上手くならないと悩んでいる人は、意味のある練習ができているかチェックしてみてくださいね。
練習は二つに分けられることと、練習の質の上げ方がわかっていれば、今の限界を超えてどんどん成長できるはずです!
そしてそれらは脳からの指令で動いています。これらの基本原則から逃れられる人はいません。
自分を深く理解して、自分の可能性を最大に発揮していけるようになりたいですね!