まずそもそも、そんなものがこの世に存在してるって事すら知らない人がほとんどだと思います。
現代には人間の心身に焦点をあてた健康法って、たくさんあります。
ピラティスやアレクサンダー・テクニーク、アロマ、鍼灸、整体マッサージ、足つぼ、その他いろいろありますね!
フェルデンクライス・メソッドもそれに類する運動療法の一つと言えます。
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創始者モーシェ・フェルデンクライス
フェルデンクライス・メソッドの「フェルデンクライス」は創始者の名前を取っています!
モーシェ・フェルデンクライス(Moshe Feldenkrais、1904年5月6日 – 1984年7月1日)
理学博士、物理学者、人間発達学者、エンジニア、発明家、武道家。
東ヨーロッパのウクライナ地方に生まれ、青年の時にパレスチナに移住し、イスラエルの市民権を持つ。
1930 年代ソルボンヌ大学で、ノーベル賞受賞者ジュリオ・キュリーと共同研究をし、同じ頃、柔道の嘉納治五郎とパリで出会い、自身がフランスでの最初の黒帯所持者になり、フランス柔術クラブを設立。
1940年代、ナチスの侵略を避けるためイギリスに渡り、イギリス海軍にて対潜水艦研究に取り組み、潜水艦探知機ソナーなどを発明。同時期にそれまで培った知識をまとめ、『身体と成熟した行動』を出版。フェルデンクライス・メソッドを体系化し、世に公表する。
1950 年代にイスラエルに戻り、イスラエル国防軍電子局の長官を務めた後、1984年首都テル・アビブで亡くなるまで、世界各国から招かれフェルデンクライス・メソッドを教えた。
その内容は、解剖学、生理学、幼児発達学、行動科学、東洋武術、身体学を研究する中で、フェルデンクライス博士が発達させたもので、彼から直接レッスンを受けた人に、イスラエル初代首相、ダヴィド・ベン=グリオンやヴァイオリニストのユーディ・メニューイン、演出家のピーター・ブルックがいる。また人類学者のマーガレット・ミードや心理学者カール・プリブラム、精神物理学の研究者、ジーン・ヒューストンとロバート・マスターズとの親交も深かった。
プロフィールを読むと、彼が国家としてのイスラエルの歴史に深く関わった人物であることがわかります。
また、モーシェ・フェルデンクライス博士は、ありとあらゆる当時の最新科学に通じていた一級の科学者であり、物理学や大脳・神経生理学、生理学、解剖学、心理学、精神医学、系統発生学、ヨーガ、柔道などに精通していました。
これらの学問を土台にして、フェルデンクライス・メソッドは生み出されました。
どういうものなの?
一口に説明することは簡単ではありませんが、一つずつ見ていきましょう!
1.セルフイメージを発達させるためのもの
このメソッドの概要を一言で言うならば、
・人間は誰しもセルフイメージに従って行動する。
・セルフイメージはほぼ無限に改善できる。
・セルフイメージを改善するならば、ほとんど全ての肉体的問題が解決に向かうだけでなく、人としての資質を向上させられる。
というものです。
人間は生まれた時は、ほかの動物と違ってほとんど何もできないですが、学習によって動きを学び、自分という感覚に慣れていきます。
この学習した「自分という感覚」をセルフイメージと言い、私たちは無意識にこの感覚に従って全ての行動を取っています。
例えばバッターボックスに立つ打者を思い浮かべてみましょう。
生まれてから今までに、手や腕の動きに親しんできた人は本能的に腕でバットを振ろうとします。
しかし、腰や背中の動きの感覚がより鋭敏な人は、無意識に胴体をねじってスイングします。
もしも小さい頃からピアノなどのお稽古をしていて、指先や手首の感覚が強い人は、手先でバットをコントロールしようとするでしょう。
鋭い方はもうお気づきでしょうが、これは練習量でカバーできる問題ではなく、バッターとしての才能に関わる話です。
もしバッターボックスには無縁な人だったとしても、セルフイメージが未発達で偏っていると、日々の生活で問題が出てきます。
ほとんどの肩こりや腰痛、膝の痛みなどは、セルフイメージの偏りからくる、悪い身体の動かし方からきています。
参考記事:vol.19 “半自動運転!?”【フェルデンクライス博士の言ったこと】
◇実際にあなた自身のセルフイメージの一端を調べてみましょう!
目をつぶって両肩の高さに両手を伸ばして上げてみて下さい。
・・・目で見ていないのになぜそれが肩の高さだとわかったのでしょう?
その身体感覚こそがセルフイメージです。
・・・目を開けて見るとそれは正確に両肩の高さでしたか?
偏りのない正確なセルフイメージを持っている人はごくわずかです。
フェルデンクライス・メソッドは、このセルフイメージを変化させ、発達させようとするものです。
2.新たな角度から人間を理解するためのもの
モーシェ自身はこのメソッドを単に身体的な問題の解決法だけでなく、「人間をより高い次元に導く知識」のように捉えていました。
彼に言わすと、人間の脳機能は「運動、感覚、感情、思考」の四つに分けることができ、それぞれ幼少期からの体験によって習慣化、パターン化されています。そして「運動」のパターンは最も扱いやすく、かつ他の三つにも大きな影響力を持つので、「運動」のパターンを変化させることで人間そのものを変革できるのです。
(運動、動きがなぜそれほど重要なのかは別の記事にも書いています。)
参考記事:vol.26 “人生とは動きである!?”【フェルデンクライス博士の言ったこと】
3.動きによって自分の体に気付くためのもの
つまるところ「運動」に働きかけて「体を動かすこと」がメソッドの主たるものです。
とても簡単に言えばゆっくり心地よい動きで、内省しながら、動きを探求していくメソッドです。
より詳しく知りたい人はモーシェ博士の著作を読んでみましょう。
モーシェの代表著作
モーシェの著作はいろいろありますが、そのほとんどが英語で書かれています。
日本語に翻訳されているものはまだまだ少なく、語学が得意な人は英語でいろいろ読んでみて面白いと思いますが、そうでない方には少々難易度が高い・・・。
では日本語訳が出てる本をどれか一冊読むとしたら?って聞かれたら、まずこれになるでしょう。
この本はモーシェの代表作として有名で、フェルデンクライス・メソッドについてモーシェ自身の解説を読むことができます。
内容は、セルフイメージや、人間の発達段階、脳の機能、人類の未来などについて書かれています。
また代表的な12のレッスンが紹介されてあり、彼自身の説明がついています。
非常に興味深い内容であることは確かなんですが、唯一の難点は「メチャクチャムズカシイ」こと!
医学を勉強した人ならある程度入りやすいのかも知れませんが、素人のわたくしが最初に読んだ時は理解するのに時間がかかりました。
流し読みはぜったい無理だと思われます・・・。
それはともかく、部分部分をひろって読んでいっても、世界観を変えられる程の破壊力があります。
どんな効果があるの?
たくさんの動きの種類があり、一つ一つに意図された目的がありますが、レッスンを受けた効能は人それぞれ感じ方が違います。
わたしの場合は、以下のような効能がありました。
・腰痛、頭痛、肩こり、ひざや腕の痛みなど、身体の痛みがなくなる。
・肺活量や運動能力が上がり、スポーツをする時に楽になる。
・日常的な歩いたり、座ったりする動作がスムーズになり、何をするにも疲労感が少なくなる。
・精神的に安定し、心をリラックスさせることができる。
・人間の脳と身体に関して深い理解を得られる。
参考記事:フェルデンクライス・メソッド 10年以上続けてみて思うこと【どれだけ効果あるの?】
また楽器奏者としては・・・
・演奏技術が自然に高まり、練習前のウォームアップが必要なくなりました。
・そしてこのメソッドを応用したおかげで、フォーカル・ジストニアという不治の病が完治しました!
参考記事:音楽家のジストニアは治るのか?【完治した体験談】
なお、カラダ♮のYouTubeでは、音楽家に向けてフェルデンクライス・メソッドを解説した動画も公開しています。
ぜひ参考にしてください!
どんなものか体験したい人向けには、フェルデンクライスの体験レッスン動画があります!